~~メルマガ有機化学~~

 2008年第24号 もくじ

1.今週の反応・試薬 2.注目の論文 3.安全な実験のために 4.館長の本棚 5.編集後記

有機化学美術館更新情報 分館:紫外線で素早く変色する分子 (08.7.12)


 ☆今週の反応・試薬 ~ Burgess試薬

 1968年、E.M. Burgessが報告した試薬。下図の構造を持ち、マイルドな条件でアルコールを脱水してオレフィンに変換する。


Burgess reagent

 クロロスルホニルイソシアネート(ClSO2-N=C=O)にメタノール・トリエチルアミンを順次作用させることで合成する。二・三級アルコールと反応させると図のようなメカニズムでsyn脱離を起こし、オレフィンが得られる。転位などを伴わず、穏和な条件で進行するので有用性が高い。

 この他、一級アミド(-CONH2)からニトリルの合成ができる他、各種ヘテロ環の合成例も報告されている。他にも応用例は多い。

※脱水反応はやる機会はあまりないですが、いざとなるといい条件がなくて困ったりします。覚えておく価値のある試薬と思います。

 参考リンク:Burgess Reagent in Organic Synthesis(PDFファイル)
 画像は英語版Wikipediaより


 ☆注目の論文

・全合成

Efficient Synthesis of a Novel Resorcyclide as Anticancer Agent Based on Hsp90 Inhibition
Xiaoguang Lei, Samuel J. Danishefsky
Adv. Synth. Catal. Early View DOI: 10.1002/adsc.200800187

 抗ガン作用を持つラディシコール誘導体を、クリックケミストリーの技術を使って迅速かつ高収率で合成。

Total Synthesis of (±)-2-O-Methylneovibsanin H
Annette P.-J. Chen and Craig M. Williams
Org. Lett. ASAP  DOI:
10.1021/ol801117e

 バイオミメティックなテルペンの合成。よくできてます。

・反応

Control of Four Stereocenters in an Organocatalytic Domino Double Michael Reaction: Efficient Synthesis of Multisubstituted Cyclopentanes
Bin Tan, Zugui Shi, Pei Juan Chua, and Guofu Zhong
Org. Lett. ASAP  DOI:
10.1021/ol801246m

 Michael付加のコンボで4連続不斉中心を一挙に制御し、5員環を作る。しかしキニーネって本当に何でもできますね。

A Chiral Lewis Acid Strategy for Enantioselective Allylic C-H Oxidation
Dustin J. Covell, M. Christina White
Angew. Chem. Int. Ed. Early View DOI: 10.1002/anie.200802106

パラジウム・Cr-Salen錯体・酢酸・ベンゾキノンの組み合わせで、オレフィンのアリル位を不斉アセトキシ化する。どこからこんな凝った条件を引っ張り出してくるんだろうと思いますが、それなりのロジックがやはりあるようです。

Copper-Mediated N-Cyclopropylation of Azoles, Amides, and Sulfonamides by Cyclopropylboronic Acid
Sébastien Bénard, Luc Neuville, and Jieping Zhu
Org. Lett. ASAP  DOI: 10.1021/jo801033y

シクロプロピルホウ酸と銅塩によるN-シクロプロピル化。アミドやヘテロ環のNHにサクサクと三角形が刺さるので、製薬会社的にメリットがある反応と思います。

Copper-Mediated C−H Bond Arylation of Arenes with Arylboronic Acids
Ikuya Ban, Tomoko Sudo, Tadashi Taniguchi, and Kenichiro Itami
Org. Lett. ASAP  DOI:
10.1021/ol8013717

銅を使ったAr-HとAr'-B(OH)2のクロスカップリング。しかしC-H活性化はごく普通のことになってきてますね。

※興味深い論文などありましたら、こちらより情報をお寄せいただければ幸いです。反応・全合成の他、医薬品合成・超分子・材料・天然物化学などなど何でも結構です。


 ☆安全な実験のために

 トシルヒドラジド(TsNHNH2)を、ヒートガンで60度に暖めて乾燥していたら、突然煙を上げて速やかな分解が起こった。

 Wolff-Kishuner還元の代替反応などに、トシルヒドラジドは比較的よく使われる試薬です。しかしN-N結合を持つ試薬の例に漏れず、加熱などに対して安定性はよくありません。基本的にN-N,N-Oなどの結合を持つ化合物は、固体状態で加熱すべきでないと考えた方がいいでしょう。

(参考:有機化学実験の事故・危険―事例に学ぶ身の守り方 p211より)


 ☆館長の本棚

 歴史から学びはじめる有機化学  (任田康夫著 プレアデス出版 2100円)

 このジャンルには数少ない読み物系の本。基本的に化学になじみのない人から学部1~2年生くらいを対象に書かれている本かと思います。染料や香りの化学など身近なテーマ中心に読みやすく書かれており、専門の研究者でもなるほどと思うところが少なくありません。入門書として良くできているのではないでしょうか。


 ☆編集後記

 先日、「近代消防」という雑誌にカーボンナノチューブの画像を提供しました。消防服にも耐熱性の高いナノチューブの使用が検討されているのだそうで、防火もナノテクの時代のようです。で、一冊掲載号を送っていただいたのですが、いやあこんな雑誌も世の中にはあるのだなあと。時節柄、サミットに対応する対テロ訓練、四川地震の被害分析、そして硫化水素自殺への対応などの記事が満載で、なるほど知らない人が知らないところで努力しているからこの世の中が成り立っているのだなあ、と改めて思った次第です。

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