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 2008年第31号 もくじ

編集長のパソコンがアクシデントで入院中ですので、今回は簡略版でお送りいたします。

1.注目の論文 2.3.安全な実験のために 4.館長の本棚 5.編集後記


 ☆有機化学のことば

 ・「ホモ」という単語
 有機化学分野で「ホモ」というのはいろいろな意味に使われる言葉で、しばしば混乱の元になります。「HOMO」と大文字のアルファベットで書く場合は、 たいていフロンティア軌道理論でいうところの「最高被占軌道(Highest Occupied Molecular Orbital)」を指します。しかし接頭語で使われる「ホモ」はギリシャ語の「同じ、同一の」を表す言葉から来ており、ここから多くの言葉が派生しま す。

・ホモジニアス(homogenius)……「均一な」の意味。全ての化合物が溶媒に溶け、全体が均一になっている場合などを指します。触媒などが溶けておらず、不均一な場合は「ヘテロジニアス」です。

・ホモカップリング(homo-coupling)……同一のパーツ同士が結合すること。この場合反対語は「クロスカップリング」です。
・ホモリシス(homolysis)……共有結合でつながった原子同士が、ラジカルを発生しながら切れること。2電子を共有していた原子が、1電子ずつを 均等に持ち去って分かれることからこの名があります。形容詞ではホモリティック(homolytic)、反対語(陽イオンと陰イオンに切断される)は「ヘ テロリシス」(heterolysis)です。

・ホモキラル(homochiral)……エナンチオマーの一方だけが純粋に(あるいは偏って)存在する状態のこと。生体を構成するアミノ酸や糖は基本的 に一方のエナンチオマーだけが使われていますが、このような場合「天然のアミノ酸はホモキラルである」というような使い方をします。

またhomoという接頭語は、「もとの分子より炭素(あるいはメチレン単位)が1つ多い」という場合にも使われます。ピペラジンは6員環に2つ窒素を含ん だ構造ですが、ここにメチレンを1つ増やして7員環にしたものは「ホモピペラジン」となります。これも炭素が1つ多い「同族体」という意味から来ているの で、やはり「同じ」という意味から派生した言葉ではあります。

有機化学でホモログ(homologue)といえば、「炭素が一つ多い同族体」を意味します。Arndt-Eistert 合成などによって元より1炭素増やす反応は「ホモロゲーション」と呼んだりします。ちなみに生物学などで「ホモログ」といえば、よく似た配列を持つ遺伝子 やタンパク質などを指す言葉で、化学用語とは全く意味が異なるので注意が必要です。

また同じ炭素から生えている2つの置換基を「ジェミナル(geminal、「双子」を意味するgeminiから)」、隣り合った炭素から生えている置換基 を「ビシナル(vicinal、ラテン語で「隣」を意味する「vicinus」から)」と表現しますが、さらに遠い1,3-位の関係にある置換基は 「hominal」と呼ぶのだそうです。もちろんhomologueから来ている言葉ですが、まああまり使われないようです。


 ☆注目の論文

今月号のChemistry Asian Journalは、野依良治先生の70歳記念号になっています。2月の向山先生の80歳記念号に続き、手に取って表紙を見た瞬間に感激のあまり雑誌を取り落としそうになったのは筆者だけではないことでしょう。

Aryl Triolborates: Novel Reagent for Copper-Catalyzed N Arylation of Amines, Anilines, and Imidazoles
Xiao-Qiang Yu, Yasunori Yamamoto, Norio Miyaura
Chem. Asian J. Early View DOI: 10.1002/asia.200800135
以前メルマガ17号で紹介したChan-Evans -Lam縮合の改良版。アリールホウ酸をトリオールでボレートとして反応を行うことで、触媒量のCu(OAc)2で反応が進行。各種窒素求核剤が使用可能で、収率も高い。この反応の決定版か。

Catalytic Intermolecular Linear Allylic C-H Amination via Heterobimetallic Catalysis
Sean A. Reed and M. Christina White
J. Am. Chem. Soc 130, 3316 - 3318 (2008) DOI:
10.1021/ja710206u

C-H活性化の研究で活発なWhite。今回紹介の論文の内容より、HPのポスターが面白いです。仕事は知っていたのですがC&E newsの受賞で 女性ということをいまさらながらに知りHPにアクセスしてみたところ、
http://www.scs.uiuc.edu/white/
こういうセンスの研究者は日本ではみないなぁと紹介してみました(情報:fuzi0さん)。
・うーむ、この「GROUP」の燃えてる写真のバカさ加減がいいですね。個人的にはAndrew Young君のデンドリマーな髪型に萌えです。


 ☆安全な実験のために

 プロパルギルアルコール、ブチンジオール、プロピオール酸(HC≡CCO2H)は毒性があり、皮膚に触れると激しい刺激がある。

 これはあまり知られていないかと思います。筆者も今これを読んで「ああ、あれはそうだったのか」と思い当たったんですが。場合によっては眠れないほどの痛みになるそうです。気をつけましょう。

(参考:有機化学実験の事故・危険―事例に学ぶ身の守り方 p146より)


 ☆館長の本棚

創薬科学・医薬化学 (ベーシック薬学教科書シリーズ 6) (橘高 敦史編 4935円)

 創薬の教科書シリーズ、第6巻の創薬化学編です。様々な分野の医薬品の創出過程、合成法などがまとまっており、大変充実した内容です。合成化学者の立場から書かれており、たくさん出ているこの類の教科書の中でも、個人的には一押ししたい本です。


 ☆編集後記

 ということでメインマシンのVAIOが吹っ飛び、古いPowerBookを引っ張り出して書いております。あわててHPエディタなどDLして使っ ておりますのでちょっと勝手がわからず、構造式も描けないのでこんな形での発行となりました。まあ外付けのHDにバックアップは取ってあるので大丈夫…… だと思うんですが、書きかけの原稿はきれいに消滅しました。バックアップはもちろんのこと、作成途中の文書なんかはUSBメモリやらGmailやらをうま く使って、きちんと情報を二重化して持っておくことが大事だと改めて思う次第です。

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