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 2009年 第10号 もくじ

1.今週の反応・試薬 2.注目の論文 3.安全な実験のために 4.館長の本棚 5.編集後記

有機化学美術館更新情報:(分館) 千円DNA どうでもいい小ネタです。


 ☆今週の反応・試薬

 ・トリクロロアセトイミデート

 O-アルキル化剤。通常、アルコールに水素化ナトリウムなどの強塩基を作用させ、トリクロロアセトニトリルを作用させて合成する。

 通常のハロゲン化アルキルは塩基性条件でアルキル化を行うのに対し、各種ルイス酸やプロトン酸など酸性条件下で反応を行えるのが特徴。グリコシル化反応などにも用いられる。

 tert-ブチル、ベンジル、アリルなどのトリクロロアセトイミデートが試薬として市販されており、アルキル化剤として使用可能である。

※塩基性に弱い基質の保護に便利。頭に入れておくべき反応試剤です。

参考リンク:Aldrich ChemFiles (PDF)


 ☆注目の論文

・反応

Suzuki−Miyaura Cross-Coupling Reactions of Primary Alkyltrifluoroborates with Aryl Chlorides
Spencer D. Dreher, Siang-Ee Lim, Deidre L. Sandrock and Gary A. Molander
J. Org. Chem. ASAP DOI: 10.1021/jo900152n

 アルキル-BF3Kと、塩化アリールの鈴木-宮浦カップリング。官能基許容性も高く、実用的なんじゃないでしょうか。

A Practical, Two-Step Synthesis of 2-Substituted 1,3-Butadienes
Sushmita Sen, Swapnil Singh and Scott McN. Sieburth
J. Org. Chem. ASAP DOI: 10.1021/jo802737x

 タイトル通り、2-置換-1,3-ブタジエンの合成。地味っちゃ地味ですが、実用的なんじゃないでしょうか。

C(aryl)-O Activation of Aryl Carboxylates in Nickel-Catalyzed Biaryl Syntheses
Lukas J. Gooßen, Käthe Gooßen, Corneliu Stanciu
Angew. Chem. Int. Ed. Early View DOI: 10.1002/anie.200900329

 ミニレビュー。ニッケルを使ったクロスカップリングも、ずいぶん可能性が広がっています。パラジウムでハライドをくっつけるばかりの時代じゃなくなってますね。

・全合成

Synthesis of Natural Product Inspired Compound Collections
Kamal Kumar, Herbert Waldmann
Angew. Chem. Int. Ed. Early View DOI: 10.1002/anie.200803437

 これもミニレビュー。天然物と合成品の間には、まだ医薬への可能性が眠っていると思います。

Total Synthesis of Hopeahainol A and Hopeanol
K. C. Nicolaou, T. Robert Wu, Qiang Kang, David Y.-K. Chen
Angew. Chem. Int. Ed. Early View DOI: 10.1002/anie.200900438

 ポリフェノール系化合物の、パズル的な合成。Nicolaou先生、最近こういう感じのが多いですね。

・その他

Tough Supersoft Sponge Fibers with Tunable Stiffness from a DNA Self-Assembly Technique
Chang Kee Lee, Su Ryon Shin, Ji Young Mun, Sung-Sik Han, Insuk So, Ju-Hong Jeon, Tong Mook Kang, Sun I. Kim, Philip Whitten, Gordon G. Wallace, Geoffrey M. Spinks, Seon Jeong Kim
Angew. Chem. Int. Ed. Early View DOI: 10.1002/anie.200804788

 DNAとカーボンナノチューブを合体させた柔らかでタフな新素材。なんか凄そうですよ。


※興味深い論文などありましたら、mmorg-chem.orgまで(@を半角に変換してお送り下さい)情報をお寄せいただければ幸いです。反応・全合成の他、医薬品合成・超分子・材料・天然物化学などなど何でも結構です。

このほど、筆者が作成に関わりました「創薬化学カレンダー」を発売元からいただきましたので、情報をお寄せいただいた方にプレゼントしたいと思います。3報お送りいただいた方、先着8名ということで。できれば論文の内容に関するコメントもお願いします。どっと一気にまとめて送ってこられると大変なので、できればぼちぼちと。


 ☆安全な実験のために

 2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(DDQ)は、湿った溶液中では徐々に分解し、猛毒のHCNを発生する。

 これはあまり知られていない危険と思います。特にMPM基を脱保護する際など水分を共存させますので、開放系で加熱還流などをするとシアンガスが流出する危険があります。必ずドラフト内で扱うべき試薬です。

(参考:有機化学実験の事故・危険―事例に学ぶ身の守り方 p.118より)

 ☆館長の本棚

 「ネイチャー」を英語で読みこなす 竹内薫著 講談社ブルーバックス 987円

 しばらく前に、「日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で」という本が話題になりました。21世紀、英語が世界を呑み込み、日本語で「知識」を綴る者はいなくなるのではないか、という問題提起です。科学の分野では英語ができないことには話になりませんので、この問題はすでに起こっているといえます。筆者も「Nature」「Science」が母国語感覚で読めていたら今の倍くらいは賢くなれているだろうと思うのですが、こればかりは愚痴っていてもしかたなく、やるしかありません。

 この本はサイエンスライターにして翻訳家、Nature日本語版にも深く関わった竹内氏の著書。科学英語講座というよりは、意外に一般向けの記事も多いNatureへのアプローチの仕方を綴った本です。気楽に英語論文を読めるようになる入口として、手に取ってみてはいかがでしょうか。


 ☆編集後記

 慣れない確定申告などで、相当にテンパっております。どうも書類というものは生理的に受け付けないようで、その上自分の収入という厳しい現実と向き合わなければならない作業、なかなかしんどいものがあります(笑)。というわけでこのメルマガも若干発行が遅れました。

 こういう作業をしていると、なんでハンコというものはああまで重要視されるのだろうか、と不思議になります。1本100円で買えて、フォトショップで簡単に偽造もできるようなものを後生大事に守っていく必要はあるのかなと思うのですが、まあこういうことはそうは変わっていかないのでしょうね。個人的には早よなくなれと思っているのですけど。

 それはそうと、前回書いたHPの配色の話。変えた方がよいとの声と、黒地に白文字はインパクトがあってめったに見かけないからいいんではないかという声の両方をいただいております。確かに差別化という意味はあるし、10年やってきて今さらという気もするんですよね(笑)。

 いずれにしろ、デザインは少し考えようと思っています。新しいソフトなども仕入れたので、少しこの方面の腕も磨かないといけないので。

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